2010年9月26日日曜日

S0533_生徒指導・進路指導の研究(中・高)

~使用教材~

『これからの教師と学校のための教科外教育の理論と実践Q&A』



~リポート作成の留意点~

生徒指導の原理について詳しく記述したあとで、それを実践する具体例を展開する方が評価が高いようです。



~S0533_生徒指導・進路指導の研究(中・高)_リポート作成例(評点:B)~

中学・高校における生徒指導の原理は何か、また、その際に留意しなければならないことは何か、説明してください。


1.生徒指導の原理
生徒指導の原理を考えるにあたり、まず「原理」の言葉の定義を明確にする必要がある。教育活動における指導の「原理」とは、その指導を行う際の「内容・方法とその根拠」を含む「目標・目的」達成のための基本方針である。
生徒指導の目的に関して、文部省(現文部科学省)の『生徒指導の手引き』では、生徒指導を「内在的な価値をもった個々の生徒の自己実現を助ける過程であり、人間性の最上の発達を目的とするものである。」としている。
この目的、すなわち自己実現と人間性の育成のための具体的な目標は、次の3つである。
①教師と生徒の信頼関係の構築
②生徒相互の人間関係の構築
③自主性、判断力、行動力の育成
①②は、主に人間性の育成に関する項目で、教師を含む集団の中で他者との関係によって育まれる。また、③は、主に自己実現に関する項目である。
さて、ここで生徒指導の「目標・目的」が示されたので、次に指導の「内容・方法とその根拠」を考える。
①②に関して、これは他者との相互作用の中で育まれるものなので、学校全体や学年、学級における集団指導が必要である。その際には、集団における相互作用の尊重や、集団の力の利用、人間尊重・友愛と自由の尊重、規律の維持などを重視するとともに、集団に対する所属感や連帯感を高め、相互に理解し尊重できる環境を形成することを意識する。
③に関して、これは生徒一人ひとりに差異があるため、個々に対応する個人的な指導が必要である。ここで、自主性、自律性(判断力)、自発性(行動力)とは、次の能力を意味するもので、自己実現の基盤となるものである。
自主性:人間関係において、相互に権利の主張と義務の遂行を可能にする力
自律性(判断力):目的に沿って行動を規制し、節度あるものにする力
自発性(行動力):欲求や情緒を直接的に行動につなげる力
①~③すべてに関して、これらは生徒が主体的に判断し行動する能動的な活動であるので、問題解決能力の育成が不可欠である。また、生徒指導はすべての生徒を対象として行われる指導であることから、学校全体での組織的運営、すなわち全教師の参加と専門職分化が必要となる。

2.生徒指導の留意点
生徒指導のねらいについて、『生徒指導の手引き』には、「一つは、いわゆる積極的な面で、生徒の人格あるいは精神的健康をより望ましい方向に推し進めようとする指導である。これはすべての生徒を対象として行われる必要がある。もう一つは、いわゆる消極的な面で、適応上の問題や心理的な障害をもつ生徒、いわゆる問題生徒に対する指導である。」と大きく2つの側面が示されている。
1.で考察した目標は、いずれの面にも対応するものである。また、積極面、消極面のどちらにおいても、その指導の特質から考えて、生徒理解を深めることが重要と言える。
ここでは、生徒指導の留意点として、特に生徒理解に対する留意事項をまとめる。
①個々人で異なる状況を的確に把握する。
それぞれの生徒は身体的にも精神的にも異なり、またその生徒を取り巻く家庭環境なども多様である。生徒理解の基盤として、まずそのような環境の違いを把握する必要がある。その方法として、家庭との連絡を密にすること、すなわち保護者と連絡を取り合うことがあげられる。学校と家庭が協力することは、教育活動全般においても必要なことであり、効果的な指導を行うためにも大切である。
②長期的、多角的に理解する。
生徒理解は、現在のある一部だけではなく、過去の状態から未来の展望につながる成長の過程として把握しなければならない。すなわち時間的な幅を持った長期的理解が必要である。
また、生徒のある一側面だけではなく、様々な価値基準から多面的に理解する必要がある。そのためには、教員間の協力体制の下、多くの情報を得られるようにしておく。
③共感的な態度で生徒と接する。
生徒と望ましい人間関係を構築することは、深い生徒理解の前提となるものである。その方法として、指導の基本に共感的な態度で生徒と接することがあげられる。
④生徒が自己理解できる状況をつくる。
生徒理解は教員が把握するだけでなく、生徒自身も理解することが必要である。なぜなら、自己実現とは生徒が自己理解の下、自身を能動的に成長させる結果だからである。教員の生徒理解も、その援助のためにある。
したがって、生徒自身の発達課題を認識させることと、発展の可能性を最大限に広げるよう援助することが大切である。

3.生徒指導の具体例
主題として「いじめ問題」を取り上げ、その状況と対応の具体例をまとめる。
いじめの起こる状況において、「被害者」、「加害者」、「観衆」そして「傍観者」の存在がある。ここでは被害者は小学校3年生の男子児童で暴力行為を受けている。加害者及び観衆は同学級の男子児童数名である。
問題発覚は、被害児童の保護者が、児童が傷を負っていることに気づいたことによる。報告を受けた学校側は、担任教諭による家庭訪問、被害児童の親しい友人への状況聴取を実施。いじめの組織構造を調査し、被害児童の保護者と学校での話し合いを行っている。その後、加害児童への注意や学年全体でいじめに関する作文の提出を行った。
いじめ問題において、解決への第1段階は問題の早期発見である。被害者は両親や担任教諭にも問題を報告しないことが考えられる。なぜなら、その報告は「わたしは、いじめられています。」と言う、自身が弱者であることを認めるものだからである。特に、親や兄弟に対しては、情けない恥ずかしい自分を知られたくないという思いから、虚勢を張り、問題を隠そうとすることがあり得る。いじめ問題の予防策としても、このような傾向が考えられることを、あらかじめ保護者に周知を促すことが必要である。被害児童の保護者においても、「なぜ自分たちに話してくれなかったのか。」と疑問に思うようである。
担任教諭の対応としては、「カッコ悪い自分」でも素直に見せられるような信頼関係を気づいておくことが理想である。そのためには、自身の経験から人としての弱さも正直に見せ、それを克服できるのだという強さを併せて示すことが重要ではないかと考える。


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