2010年8月1日日曜日

S0529_特別活動研究

~使用教材~

『道徳教育実践:新たな人権教育の創造』




~リポート作成の留意点~




 

~S0529_特別活動研究_リポート作成例(評点:A)~

特別活動において学校行事が果たす役割を整理し、その特質をよく表していると思われる学校行事の活動例をひとつ示しながら指導する際に注意すべき点を具体的に説明してください。


1.学校行事が果たす役割
特別活動の目標として「自主的、実践的な態度を養う」ことが挙げられる。この目標のためには、自身の考えをまとめ「自己決定する力」やその意思を集団の中へ反映する「集団決定する力」について学ぶとともに、それらを体験活動として実践する場が必要になる。何故なら「自主的、実践的な態度」は、「望ましい集団活動を通して」「なすことによって学ぶ」という特質の下に育まれるからである。
学校行事はまさに「なすことによって学ぶ」実践の場であり、果たすべき役割であると言える。また「望ましい集団活動」とは、所属感や連帯感、公共の精神、協力などを伴う活動を意味し、学校行事もまたこれらを内容としなければならない。
新学習指導要領(2008年改訂版)には学校行事の目標として次のように示されている。
「学校行事を通して、望ましい人間関係を形成し、集団への所属感や連帯感を深め、公共の精神を養い、協力してよりよい学校生活を築こうとする自主性、実践的な態度を育てる」
旧学習指導要領(1998年改訂版)から「望ましい人間関係を形成し」という文言が追加され、「望ましい集団活動」の条件が重視されている。
次に5種類の学校行事の活動内容とそれぞれのねらいをまとめる。
(1)儀式的行事
学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。
(2)文化的行事
平素の学習活動の成果を発表し、その向上の意識を一層高めたり、文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと。
(3)健康安全・体育的行事
心身の健全な発達や健康の保持増進などについての関心を高め(理解を深め)、安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資するような活動を行うこと。
(4)遠足・集団宿泊的行事
(自然の中での集団宿泊活動などの)平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、人間関係などの集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行うこと。
(5)勤労生産・奉仕的行事
勤労の尊さや生産の(創造することの)喜びを体得するとともに(職場体験などの職業や進路にかかわる啓発的な体験が得られるようにするとともに)、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと。
以上、新学習指導要領における学校行事の活動内容について、いずれも個と集団の関係を学ぶことに重点を置いている。
人間は本来、他者との関係の中に生きる「関係存在」なのであって、ゆえに人は他人や社会のために自己の役割・責任を果たすことのみによって喜びや生きがいを感じることができる。したがって、豊かな人生のためには、「自己理解」すなわち自己の生き方・在り方についての理解を深め、自己に固有の人生の意味を見出し、その充実・達成に努めることが重要である。そのためには、「他者理解」の下に望ましい人間関係を築くことが前提となり、これもまた、「道徳的実践の場」と言う観点から見た学校行事の果たすべき役割であると言える。

2.学校行事の活動例と指導の際の注意事項
ここでは小学校の運動会を活動例として、指導の際の注意事項をまとめる。運動会は、上述の学校行事の活動内容「(3)健康安全・体育的行事」に分類される。活動のねらいを鑑みると、次の3点に留意して指導することが望ましいと思われる。
①児童の学校生活に望ましい秩序と変化を与える活動とすること
学校生活に有意義な変化を与えることで、新しい活動の動機付けとする。また、団体で行う競技や演技種目に挑戦していくことで、クラスの児童が一致団結し、結束を高めていくよう指導する。
②大きな集団の中で協力して、共に生きる態度を育てる活動とすること
学校行事の特質として、全児童が参加する大規模活動であるという点があげられる。この特質を利用して、高学年の児童には、下級生をリードする役割を通して、責任感を育てる機会とすることができる。また、低学年の児童には、上級生の指示に従い、集団の規律や礼儀などを学ぶ機会とすることができる。このように、運動会の活動を通して、規律や責任・思いやり・礼儀など、集団の一員として望ましい態度を育成するよう指導する。
③家庭および地域との連携を深める活動とすること
学校行事を通して、学校教育と家庭や地域の人びとの連携を深め、地域に豊かな教育環境を育むことを意図する。運動会においては、地域の施設で習ったことを競技種目として実践することや保育園・幼稚園の園児を招き、保幼小競技を取り入れること、また他校との共同開催などが考えられる。このように地域との連携を図ることで、普段の学校生活のなかでは出会うことのできない人びとと接し、見聞を広め、人間観を豊かにすることができるよう指導する。

3.まとめ
ここまでに、学校行事が果たす役割が、「望ましい集団活動を通して」「なすことによって学ぶ」という特質の下、「自主的、実践的な態度」を育むことにあるのを見た。
この目標の本質は次の点である。
・他者のために何ができるかを考える
・他者のためにすることが自身の充実につながる
・実体験を通してこれらのことを知る
充実した生活は、常に望ましい集団活動の中にある。このことを知ることによって、所属感や連帯感、公共の精神が生まれ、さらに進んで協力し、生活しようとする「自主的、実践的な態度」となって表れる。
指導においては、集団活動の窮屈な点のみが強調されることのないよう生徒の活動の自由度を大きく取るとともに、各自の働きを互いに肯定的に評価する姿勢を意識させたい。何故なら、望ましい秩序は、「感謝」「尊重」といった相手を思いやる気持ちから生まれるべきものであり、それが共に生きる態度の基礎となるからである。


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