2014年11月21日金曜日

S8104_教育方法学1

~使用教材~

『新しい教育の方法と技術』



~リポート作成の際に注意した点~

現代の教育は、知識伝達重視から主体的な学習重視へとシフトしています。
変化が必要な根拠をPISAの結果に求めながら、新しい教育の方法について論じました。
学習内容、授業形態、評価方法について、それぞれの設計と評価の特徴および留意点を比較考察しています。

学習内容

主体的な学習には、知識も重要です。知識伝達は軽視されるようになったのではなく、変わらず重視されながらその応用までを考慮した設計が求められます。
知識を得るためのソースとして、現代ではインターネットや学習アプリなど、様々な可能性があります。それらを積極的に活用し、生徒一人一人の好みに合った教授方法を模索する必要があると考えています。

授業形態

  • 知識伝達を考えた場合の授業の形態:一斉授業、チームティーチング、少人数制授業、習熟度別授業など。
  • 主体型学習を考えた場合の授業の形態:発見学習、仮説実験授業、完全習得学習など。
それぞれについて、必要な人材資源の大きさ、生徒の習熟度の差への対応力が異なることに留意しなければなりません。特に主体型学習は、生徒の習熟度によって実施不可能な場合もあると考えます。すべての生徒に資する授業設計を考案する必要があります。

評価方法

評価のない教育はありません。どのような教育活動でもすべて評価する必要があります。
評価の対象は2つ。生徒と教員です。教育活動の結果「生徒がどの程度変化したのか」。そして、「その変化は意図したレベルを超えているのか」。これらを調べる必要があります。
具体的な方法は、知識伝達型、主体学習型それぞれに対応したものを適用することが求められます。


~S8104_教育方法学1_リポート作成例(評点:A)~

従来の知識伝達を重視した授業の設計と評価に対して主体的な学習を基本とする授業について設計と評価の特徴を比較し、その比較の視点ごとにまとめて授業設計ならびに評価についての留意点を述べよ。


知識伝達型の授業と主体学習型の授業にはそれぞれに利点があり、実際の指導ではそれらを組み合わせ、実施されることが必要である。ここでは知識伝達重視の授業と主体学習重視の授業について、学習内容、授業形態、評価方法の3つを観点として、それぞれの設計と評価の特徴および留意点を比較考察する。

1.学習内容の比較
授業で教授されるものとして、情報・知識、知恵・ノウハウなどの分類を考えると、知識伝達型の授業ではそのうちの情報・知識の伝達において効率的である。情報や知識は主体的に考え行動するための基盤となるものであり、応用力習得のための必要条件として重要である。現在では様々な情報源があり、学校の教科書・教材はもとよりインターネットなどからも情報を得ることが可能であり、また情報端末の普及により迅速にそれらの検索もできるようになっている。知識伝達型の授業においてもこれらのソースを有効に活用することが望ましいと考える。たとえば、理科の観測映像、英単語の音声データ、地図情報など、今までは利用が難しかった教材を比較的簡単に得られるようになっている。生徒にとっても(映像などを通してではあるが)実際に目でみることは非常に意味が大きいと考える。ただし、個人が情報を発信することも容易になった一方で、それを利用する側がその信憑性の評価を正しく行うことも必要となることに注意したい。
主体学習型では、情報・知識の応用力の習得を課題とすることができる。現行の学習指導要領で主題となっている「生きる力」は主体的に考え行動できる人材の育成を一つの柱としており、その意味で知識を活用する知恵やその一般化であるノウハウへの連結がテーマとなる。主体学習型の授業では知識の背景にある繫がりを考えさせることによって論理的思考力を習得できるよう設計する必要がある。PISAのなかの「読解力」調査にあるように、論理的思考力とは、①目的・到達点があり、解決すべき課題がある、②考える視点があり、考えのなかに証拠やデータにもとづいた根拠がある、③理論や知識を利用して説明がなされる、④結論があり、それを導いた推理がある、などの要素が含まれる。授業設計でもこれらに留意して思考方法の例を示すなどの工夫をするとともに、評価も準拠して行われることが望ましいと考える。

2.授業形態の比較
知識伝達を考えた場合に授業の形態としては、一斉授業、チームティーチング、少人数制授業、習熟度別授業などが挙げられる。これらは「教えること」を中心とした形態であり、限られた教員の人材資源を効率よく分配できるといったメリットがある。また、主体学習よりも生徒への積極的な支援が可能である。ここで積極的とは、言葉がけによる応援もちろん、教材の提案や学習計画の支援、効率的な知識理解のための説明などを意味する。系統学習をもとに生徒への直接的なアプローチができるのは大きな利点である。また授業設計では、一斉授業が一般的であるが、状況に応じてチームティーチング、少人数制、習熟度別の導入を検討するのがよいと考える。チームティーチングでは、教員間の連携に留意する必要がある。メインの授業者の後ろでサポート側が個別授業をしてしまうと生徒はどちらの教員につけばよいのか混乱してしまうし、二人の教員がそれぞれ分担してしまうと少人数制授業のようになってしまい、一斉授業の利点を活かせなくなる恐れがある。少人数制授業は、習熟度別と併せて実施することも可能であり、習熟度の高いグループでは教員とのディスカッションを通したより高い理解への導入を意図したり、逆に習熟度の低いグループではより細かい指導を行い学力の底上げをしたりといった運用が考えられる。少人数、習熟度別授業の留意点としては、教員一人当たりの担当時数が増えることにより一つ一つの授業の準備の時間が比例して減少することがある。このため、少人数に対応する教材の整備は必須であり、また効率的な授業設計の仕組みを構築しておく必要がある。
主体型学習を考えた場合に授業の形態としては、発見学習、仮説実験授業、完全習得学習などが挙げられる。これらは「学ぶこと」を中心とした形態であり、次期学習指導要領でも重視されている論理的思考力の醸成を意図したものである。知識伝達型に対して生徒への支援は間接的になる。発見学習では、様々な情報から問題解決のための道筋を探ったり、発展的な課題を見出したりしながら進められる。ここでは直観的思考が問題解決の道筋を立て、分析的思考によりその妥当性を検証することになる。また、既存の知識や経験から新しい内容を見出し検証することは学習者にとっても刺激的であり、主体的な学習動機を与えるうえでの必要条件であると考える。一方で、多くの学習者は効率的に学ぶことにも興味があり、そのため発見学習の授業設計にはじれったさを感じることもあるように思われる。非効率的な印象を与えないよう余裕を持ったカリキュラムと学習者が論理的思考の重要性を意識できる準備が必要である。仮説実験授業でも同様の留意点があると考えるが、ディスカッションを授業に取り入れる場合には、進行役の育成や発言しやすい環境など、必要条件の水準がより高くなる。また、この意味で間接的な支援が重要となる。生徒が自分の意見を発表できるためには自信とクラスやチームに対する信頼が前提となる。習熟度に差がある中でこれらの実施には少人数制授業や習熟度別授業の形式を併せて検討する必要があると考える。完全習得学習に関しては、集団授業のなかでの実施は非常に難しいと思われる。なぜなら、生徒間で習熟度・習得速度に差があることに加えて、学習そのものに対して全員が積極的であるとは限らないからである。これに対応して完全習得学習を実施する場合には、(経験から)生徒3人に対して教員1人の配置が必要であると思われる。また、eラーニングのような各自の履修ペースで進めることのできる学習システムの導入も検討する必要がある。学習意欲を高めモチベーションを保つことは主体的学習の重要なテーマである。これにもICTの導入が有効であると考える。現在ではeラーニングのような学習コンテンツをはじめ、学習支援SNSのようなWebサイトもある。今までは学習支援の提供者は学校の教員や同校の同級生が主であったが、現在ではソーシャルネットワークを通じて多くの学習者が互いの学習記録を閲覧したり、教材を共有したりといったことが可能となっている。ICTは教材の提供だけでなく、ネットワークを通じて異なる学校や年齢層の人とつながることで学習意欲や学ぶ意味を確認する強力なツールである。不特定多数とつながることを考えると、生徒がこれを利用する際には教員が監督するなど、留意は必要であるが、これもネットワークの発達によりシステム的にも労力的にも実現可能であると考える。

3.評価法の比較
知識伝達型の授業においては、前述の「情報・知識」を教えることに利点があり、これらの到達度の評価には、筆記試験による知識・理解の観点のもとに、相対評価、目標準拠評価が可能である。目標準拠評価では評価基準を明確化することが必要であり、またその基準を生徒と共有することが必要である。どこまでできればクリアなのかを明確に示すことは、生徒にとっても学習意欲と集中力を持続させるために有益となるからである。
主体学習型では、応用力の評価が求められることから、関心・意欲・態度、思考・判断・表現の観点のもとに、ポートフォリオやルーブリックを用いた評価が考えられる。留意点として、これらの方法は評価者の主観の影響を受ける可能性があるため、評価基準の明確化し説明責任を付帯させるなど、その評価へのチェック機構を働かせる必要がある。具体的には、あらかじめ生徒各位の目標設定と段階的な到達目標を置き、教員・生徒・保護者間で共通理解を図ったうえで、定期的にその進度を確認するなどが考えられる。
ここまで知識伝達型の授業と主体学習型の授業について、学習内容、授業形態、評価方法の3つを観点からそれぞれの設計と評価の特徴および留意点を見てきた。知識伝達型、主体学習型ともに利点があり、また相互に関係するところも大きく、実際の授業ではこれらの利点を組み合わせて実施されることになる。目的と段階に応じて最も有効な手段を組み合わせて授業設計することが必要であると考える。


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